研究概要 |
遺伝子の染色体上での配置は種間で保存されていることから、各種動物の染色体とマウス,ヒトの染色体の対応関係が正確に明らかとなれば、ヒト,マウスで大量に蓄積されている染色体上の遺伝子の位置に関する情報が利用可能となり、各種動物の遺伝学的な解析は大きく発展する。そこで本研究は、種間で保存されている配列を用いた染色体地図を作製することにより,各種動物とマウス,ヒトの染色体地図の対応を明らかとする哺乳類の比較染色体地図を構築し、これら動物の種々の形質の分子遺伝学的解析のための研究基盤を確立することを目的とした。 これまでの研究により,遺伝性疾患等の特定の遺伝的形質を支配する遺伝子が存在することが明らかとされている,ウシの第6、27,第28染色体,カニクイザルの第1,第2染色体,第6染色体,マウスの第7,第15染色体、ラットの第7染色体上の特定の領域を中心に比較染色体地図を構築することを試みた。 連鎖解析により連鎖地図を作成するとともに,放射線雑種細胞法を用いた物理地図の作成を行った結果,これらの染色体における機能的遺伝子を含む染色体地図が作成された。その結果,ウシの第6染色体はヒトの第4染色体と広範な領域にわたって遺伝子の配置が保存されているが、中央部において遺伝子の配置が逆転していることが明らかとなった。また、第28染色体の末端領域は,ヒトの第10染色体と対応していることが明らかとなった。カニクイザルにおいても第1染色体はヒトの第1染色体と遺伝子の配置が保存されているが、一部で遺伝子の配置が逆転していること、第2染色体はヒトの第7染色体と第21染色体が融合したような形態となっていることが明らかとなった。また、ラットでは第7染色体および第12染色体がそれぞれマウスの第15染色体および第5染色体、ヒトの第12染色体および第7染色体との正確な対応関係が明らかとなった。これらの結果はこれら動物での遺伝性疾患等の原因遺伝子の解析のために有用であると考えられる。
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