高出力パルスレーザーをダイヤモンドアンビル高圧装置によって拘束された試料に照射することによって超高圧を発生する装置において、できるだけ高い超高圧までできるだけ高い精度により圧力を測定する方法の確立とこの装置の工業的応用を目指して研究を進めた。本装置において、発生圧力を測定する際、次のような問題がある。1.ルビー蛍光線の圧力依存性を利用する圧力測定において、照射するパルスレーザーによる錯乱光と発熱による輻射光がルビー蛍光線の測定に大きな影響を及ぼす。2.高速で変化する圧力を測定するので蛍光線の波長は高速で変化し、CCDセンサの各ピクセルにおける露光時間を長くできない。3.ルビー蛍光線測定のための励起レーザによるダイヤモンドからの蛍光が無視できない。本年度は、上記の問題の中で、第1番目の問題を解決するために、ダイヤモンドアンビル高圧装置のルビー蛍光線測定用光学系と反対側のアンビル底面からパルスレーザーを照射する方法を考案した。この方法を検討した結果、次のようなことが明らかとなった。1.パルスレーザーはルビー蛍光線測定系とは反対側のアンビルを介して超高温発生体となる圧力室内の金属小片に照射されるので、反射光や輻射光の影響をかなり軽減できる。2.パルスレーザー照射用光学系をルビー蛍光線測定用光学系と独立に設計できるので、試料上におけるレーザー照射スポット径を自由に変えることができる。3.使用できるアンビルの大きさを自由に変えられ、さらに大型化も可能になるので、実施予定の工業的応用への研究に用いることができるようになる。ついで、第2番目の問題についての解決策の1つとして、分光器回折格子の刻線数を変える方法が検討され、予定測定最高圧力に対する刻線数の選択規範を得た。第3番目の問題については、ダイヤモンドからの蛍光を避けるための光スイッチについて現在検討中である。
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