現代における満足度の高い福祉の実現は、国の政策を基調とする法定の福祉サービスの提供システムと、これを地域社会・自治体の特質ある経営で包容し、いかに有効化するかという地域の取り組みに懸かっている。近代主義は、伝統的なコミュニティの働きを否定してきたが、地域が擁しているパワーを再評価して現代的な地域福祉力としていかにエンパワーメントできるか、これが本研究の課題である。 四つの課題の中、(1)第一グループでは、地域福祉力水準を評価する指標分析では、既往研究の点検と地域型シュミレーションから、在来の福祉統計指標では満足できない就業、社会参加などの諸側面を含めた地域福祉力評価の展望を得ることができた。 (2)第二グループでは、地域社会の人的パワーを支援するソーシャルワーカーの育成と言う見地から、この職能の発祥地である米国との研究交流を通じて、現代日本の地域社会における実在力・潜在力の評価と育成システム構築への基本指針を概念構築した。 (3)第三グループでは、住居・地域住環境の福祉的整備が、いかに在宅自立を可能にるか事例研究から実証するとともに、介護予防や入所型施設負担軽減などの社会的費用効果分析からの有用性を導いた。 (4)第四グループでは、国の介護保険制度等を地域独自の福祉政策として包容することのあり方によって地域福祉力水準に大きな差異が生じることを、複数の小都市・農村生活圏自治体行政の比較分析から明らかにしている。 いずれの研究も、地域実践・調査に基づき実証的に進めており、さらに持続する必要があるが、地域福祉力をダイナミックに評価できる基本的項目・指標を構造的に明確化することができたのは次段階への重要な成果である。
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