1.本研究の目指すところを「臨床倫理検討システムの開発」と規定し、「臨床倫理研究会」を5回開催した。ここには、医師、看護者、薬剤師ら、医療従事者および、一般市民が参加し、提示される事例や医療上の選択に関するいろいろなタイプの問題について、共同で検討を加えた。これは、臨床倫理の検討の仕方の開発を目指す実践であるとともに、参加者からも一般市民と医療者とが共同で考える機会になるとして好評を得ている。また、哲学を背景にする者がどのような役割を果し得るかを吟味することもできた。 2.諸ガイドラインに先立って、医療現場における倫理的検討の進め方についてのマニュアルおよび検討シートを試作し、上記研究会参加者の他、医療関係者に広く配布し、試用を依頼した。それに対する応答を参考に、その後改訂を続けている。これは今後実用的なものとして完成させることによって、医療現場における問題解決に大いに益することと見込まれる(次年度以降)。 3.東札幌病院倫理セミナー、仙台市立病院有志による研究会、仙台厚生病院11F病棟カンファレンス、群馬県立がんセンター看護部の臨床倫理研究グループ、かとう並木通り内科病院(岡山市)、日本看護協会主催のホスピスケア・ナース養成コースなどで、上記マニュアル等について説明し、試用をしてもらい、その結果でてきた事例の検討を共同で行った。これらを通して、本研究に今後協力してもらえる医療者を多く得ることができた。また、どのような倫理的問題に現場では出会っているかについて、知見を得ることができた。 4.厚生省研究助成金による二つの研究班(「終末期がん患者に対する支持療法の適応に関する研究」および「特定疾患患者の生活の質の向上に関する研究」)の会議において、本研究の立場から倫理的問題への対処の仕方について研究報告をし、医療系の研究に本研究を結び付ける試みを行った。 5.これら活動の本年度の総括を小冊子「臨床倫理学1」にまとめ、関係者に配布し、意見を求めた。その反応は次年度における研究の進め方に反映させる予定である。
|