研究課題
基盤研究(B)
本年度の研究では、以下のような知見が得られた。まず、中心となるM2052合金の力学特性に関して、いくつかの形状のばね材料を試作し、実験を行った。その結果を対数減衰率を用いて評価すると、文献値では最高0.72が得られているのに対して、どの測定も大体0.15程度とかなり小さな減衰量となっていた。この違いは、成分や処理の問題よりは、振動時の塑性変形による劣化であろうと判断された。しかし、すでに報告されているように減衰量が振幅依存が再確認され、計測時の条件に大きく依存することも判明した。詳しい解析で、対数減衰率はほぼ振幅に比例するということがわかった。さらに、減衰量だけでなく弾性率にも大きな振幅依存性があることが見出された。ただ、通常の金属の対数弾性率は0.001程度のものが多く、この値と比較すれば、条件をかなり悪くしても、高い制振性能を持つ材料であるといえることがわかった。次に、真空環境への適合を調べるために、脱ガス試験を行った。このM2052合金の主成分はマンガンで、超高真空環境での使用に関しての問題点があるかもしれないので、表面処理の異なる材料に対して室温から250度および450度での昇温脱離測定を行った。結果、複合電界研磨を行った材料のほうが、一般の表面処理の材料に比べて良好な性質を示した。さらに、脱ガスのほとんどは水素、水、窒素、炭酸ガスであった。脱ガス量は0.003Pam/s程度で、代表的なステンレス材料の値の約10倍であるが、真空環境で使用される量を考えるとほとんど問題ないことがわかった。また、実際に真空装置の部品として加工されたベローズの特性の評価を行ったところ、ステンレス製品と比べて、振動の減衰時間が早いモードとあまり変わらないモードが存在することがわかった。このような現象の原因はまだ不明である。