研究課題
昨年度の研究に基づき、M2052制振材料を使用した防振装置の試作を行った。試作に際しては、減衰能の低下を招く塑性変形を防ぐため、ばね材料に用いた部分を硬くしたものを作成した。その装置は、基本共振の周波数が約10Hz、Qが30程度であったが、広い帯域で理論どおりの防振性能が得られた。さらに性能を改善すべく、基本共振周波数の低いものを作成したが、さまざまな副共振が現れて、期待通りの性能は得られなかった。以上の実験結果から、M2052の特性を生かすには、一段あたりの防振比を稼ぐよりも、固めの防振装置を多段につなぐほうがよいとの結論を得た。ばね以外の部分もM2052で作成した防振装置を作成した。通常の金属製で見られる防振比がOdBになるような共振は見えず、良好な特性を示した。ただ、測定を行う際に、M2052ばねに応力がかかった状態にしておくと、減衰能が劣化する現象が見られたが、原因は不明である。このような高周波数(〜1kHz)での良好な制振性能を利用し、能動防振システムを試作した。これは、被防振部をM2052で作り、さらにM2052のワイヤーで懸架して防振台を作り、その上にレーザー干渉計型加速度計を設置して、負帰還制御で振動を抑えるものである。試作機では、2-50Hzの周波数帯域で20-40dBの防振比の改善が見られた。また、材料の非線形性に注目し、その力学応答を精密に測定した。減衰能の測定は、自由減衰振動を測定する場合が多いが、時間的に変動するので精密な測定が難しい。そこで、正弦的な力を加えて、その周波数を掃引して応答関数求めた。得られた結果から振動振幅が大きくなると異常な振る舞いをするが、ある振幅以下では線形の応答をしていることがわかった。このQは30くらいで、大振幅で測定すると10くらいになる。同様の傾向は、自由減衰でも見えたが、揺らぎが大きく線形の領域まで測定することができなかった。今回、初めて正しく測定することができた。