研究課題
基盤研究(B)
これまでの研究で以下のような知見が得られた。●中心となるM2052合金の力学特性に関して、振動時の塑性変形または応力による劣化等で、非常に大きな経時変化が見られた。●真空環境への適合を調べるために、脱ガス試験を行った。表面処理の異なる材料に対して室温から250度および450度での昇温脱離測定を行った結果、複合電界研磨を行った材料のほうが良好な性質を示した。脱ガスのほとんどは水素、水、窒素、炭酸ガスで脱ガス量は0.003Pam/s程度(代表的なステンレス材料の値の約10倍)であるが、真空環境で使用される量を考えるとほとんど問題ないことがわかった。●M2052制振材料を使用した防振装置の試作を行った。試作に際しては、減衰能の低下を招く塑性変形を防ぐため、ばね材料に用いた部分を硬くしたものを作成した。その装置は、基本共振の周波数が約10Hz、Qが30程度であったが、広い帯域で理論どおりの防振性能が得られた。さらに性能を改善すべく、基本共振周波数の低いものを作成したが、さまざまな副共振が現れて、期待通りの性能は得られなかった。以上の実験結果から、M2052の特性を生かすには、一段あたりの防振比を稼ぐよりも、固めの防振装置を多段につなぐほうがよいとの結論を得た。ばね以外の部分もM2052で作成した防振装置を作成した。通常の金属製で見られる防振比が0dBになるような共振は見えず、良好な特性を示した。●このような高周波数(〜1kHz)での良好な制振性能を利用し、能動防振システムを試作した。これは、被防振部をM2052で作り、さらにM2052のワイヤーで懸架して防振台を作り、その上にレーザー干渉計型加速度計を設置して、負帰還制御で振動を抑えるものである。試作機では、2-50Hzの周波数帯域で20-40dBの防振比の改善が見られた。●材料の非線形性に注目し、その力学応答を精密に測定した。新しいセンサーを開発し、3桁にわたる振幅で測定が可能になり、大振幅での異常な振る舞いから、線形の領域まで測定ができた。線形領域でのQは30くらいで、大振幅で測定すると10くらいになる。同様の傾向は、自由減衰でも見えたが、揺らぎが大きく線形の領域まで測定することができなかった。今回、初めて正しく測定することができた。