本研究の目的は、平成7年に研究代表者らが発見した「超短光パルスによる高温超伝導体からのテラヘルツ電磁波放射現象」を利用して、超伝導体中を流れる電流をマッピングするシステムを開発することである。フェムト秒レーザーを絞り、超伝導薄膜上を2次元的に走査し、放射されるテラヘルツ波の振幅を測定することにより、空間分解能20ミクロンで超伝導電流の可視化に成功した。また、放射されるテラヘルツ波が電流方向に偏光していることを利用して、電流の向きも含めたマッピング(ベクトルマッピング)装置の開発も行い、磁束がトラップされた超伝導体中を流れる電流の様子を可視化した。これらの装置を用いて、薄膜中の様々な条件下での電流分布を測定し、ビーンモデルで半定量的に説明が可能であることを明らかにし、この装置の有効性を確認した。更に、テラヘルツ波そのものを利用したイメージングシステムを開発し、半導体中の光生成キャリヤの分布測定に応用した。このシステムの発展形として、電気光学結晶とCCDを用いた準リアルタイムテラヘルツイメージングシステムの試作も行った。これらの成果は、テラヘルツ波の新しい応用として今後の発展が期待されるものである。
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