本年度はまず新しいセルの設計と試作を行った。 本研究の目的は、超高圧力下で、おもにレーザーによって加熱する高温実験を行うことにある。 超高圧下では試料が50ミクロン以下と微少なため、レーザー光を極微小部に集光させることができる設計にした。また加熱軸方向の温度勾配を最小化するため、両面から均等にレーザーで加熱できるよう、セルを上下対称の設計にし、さらにトータルの高さが低いシリンドリカルセルを採用した。また温度を上げた際の、セル全体の力学的な安定性を上げるため、ピストンの肉厚を米国カーネギー地球物理学研究所で用いられている従来型の2倍に厚くした。 本年度は加熱実験によって約0.5メガバールにおける安定性を確認した。 また本研究ではマントル物質の相平衡関係を正確に決定するため、これまであまり正確に制御されていなかった、高温に熱せられた試料の温度を正確に測ることが不可欠である。そのため高温試料から発せられる放射スペクトルの測定による測温システムの設計を行った。試料は近赤外線レーザーによって加熱されるため、一般に過熱試料には大きな温度勾配が発生する。今回の測温システムではこの温度勾配を正確に見積もることができるよう、5*5ミクロンの極微小領域から発せられる熱放射スペクトルを30点以上同時に測定、さらに極短時間のうちに温度を計算できるようにした。この測温システムにより、実験温度の測定誤差は数%以下になるものと期待される。
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