水循環研究のための水の安定同位体比サンプリング解析システムの開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11554017
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 杉本 敦子 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (50235892)
• 研究分担者: 檜山 哲哉 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助手 (30283451) ; 大手 信人 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (10233199) ; 辻村 真貴 筑波大学, 地球科学系, 講師 (10273301) ; 香川 聡 森林総合研究所, 研究員 ; 藤田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 助手 (50093307)
• キーワード: シベリア / 水循環 / 水安定同位体比 / 蒸発散 / 水蒸気 / 再循環 / 航空機観測

研究概要

土壌、植物、大気からの水抽出と分析をほぼルーチン化させることに成功した。このラインを用い、2000年シベリアにおいて航空機、タワー、バルーンなどで採取した大気サンプル、および、土壌と植物サンプルから水を抽出し、分析を終了した。1998-2000年の3年分の水同位体のデータセットを完成させ、簡単な解析を行った。98年は乾燥した夏、99年は多雨の夏、2000年は湿潤から乾燥へと環境が変化したのに伴い、土壌水や植物の水の同位体比がその水分環境に応じて変化し、地表面付近の水の移動の様子を同位体から追うことが可能となった。水蒸気の同位体比のデータセットは極めて貴重なものがとれ、降水の同位体比との比較が可能となった。水蒸気と降水の同位体比は同様な季節変化のトレンドを示し、夏の後半に低下した。このトレンドはまた土壌-植物中の水のトレンドとも一致し、この領域の地表面付近の水蒸気は水の再循環の寄与が重要であることを示すものである。
中国の乾燥地など、東シベリア以外の地域で採取した土壌水についても、本研究で作成した分析・解析法を適応し、蒸発過程等の解析に有効であることをしめした。

研究成果

• [文献書誌] Tsujimura, M., Numaguti, A., Tian, L., Hashimoto, S., Sugimoto, A., Nakawo, M.: "Behavior of Subsurface Water Revealed by Stable Isotope and Tensiometric Observation in the Tibetan Plateau"Journal of the Meteorological Society of Japan. 79,No.1(B). 599-605 (2001)
• [文献書誌] Sugimoto, A., Takata, K., Numaguti, A., Ichiyanagi, K., Kurita, N., Yamazaki, T., Kotake, T., Kubota, J., Yangisawa, N.: "Spatial and seasonal variations in surface soil moisture around Yakutsk observed in 2000"Proceedings of GAME/Siberia Workshop. 63-73 (2001)
• [文献書誌] Sugimoto, A., Naito, D., Numaguti, A., Ichiyanagi, K., Kurita, N., Ishii, Y.: "Observation on water isotopes in eastern Siberia for water cycle study"Proceedings The fifth international study conference on GEWX in Asia and GAME. 1-4 (2001)
• [文献書誌] Sugimoto, A., Yanagisawa, N., Naito, D., Fujita, N., Maximov, C.: "Importance of permafrost as a source of water for plants in East Siberian Taiga"Ecol.Res.. 17(in press). (2002)
• [文献書誌] 壁谷直記, 大手信人, 杉本敦子, 吉川賢, 王林和: "中国毛烏素沙地における地下水のCl-、酸素・水素あんてい同位体比の水平分布に地用面状態が及ぼす影響"水文・水資源学会誌. 15. 13-22 (2002)