被熱した試料の熱史を評価することを目的として、いくつかの地質試料について、フィッショントラック年代測定を行った。 貫入岩による被熟を受けた試料として、山陰地域の隠岐島後に分布する新期花高岩と古期花高岩について年代測定とフィッショントラックの長さの測定を行った。新期花岡岩は、これまでK-Ar法によって約20Maとされてきたが、フィッショントラック法によって45〜53Maであることが明かとなった。フィッショントラックの長さの頻度分布は、約8μmと11μmにピークを有するバイモーダルな分布を示し、明らかな二次的加熱の影響が認められた。測定されたトラックの数が少なく、熱史の逆解析までは至っていないが、大まかには測定された頻度分布パターンから、約50Maに240℃以下に冷却した花岡岩が、ふたたび、5Ma頃に200℃に近い温度の被熱によって再加熱されという熱履歴が明かとなった。この熱史を検証するために、新期花高岩を貫く流紋岩岩脈について年代を測定したところ、5.3Maを示した。トラック密度が低いために一方古期花高岩については、130Maという年代が測定され、トラックの頻度分布は約11μmにピークを有し、短い方に尾を引く傾向を示し、比較的緩やかな冷却史が推定された。既報のAr-Ar年代、Rb-Sr年代とそれぞれの手法の閉鎖温度から、冷却曲線図上で判断する限りは、400℃付近から200℃付近までの冷却速度は大まかには約5℃/Maであることが明かとなった。新期花岡岩・古期花岡岩ともに、ジルコンのトラック密度が低いために、トラックの長さの測定が容易ではなかった。現在即定数を増やし、熱史の逆解析についての検討を行っている。
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