研究概要 |
(1)キレート樹脂U/TEVA・spec及びTEVA・specを用いた新しいウラン(U)とトリウム(Th)の分離法を開発し,マトリックス効果なしに,これまでより少量かつ低濃度の酸で迅速・高純度・高収率の単離に成功した.これを基に,火山岩斑晶鉱物(カンラン石,単斜輝石,斜方輝石,斜長石,磁鉄鉱等)からのU,Thの完全分離法を確立した.また,同一試料からLi,B,Rb,Sr,Sm,Nd,Pbの分離とそれらの同位体測定を可能にした. (2)従来法の表面電離型質量分析計(TIMS)によるUとThの同位体分析はイオン化効率の悪いメタルイオンで測定されるのに対し,よりイオン化効率の良い酸化物イオンで (3)測定する方法を新たに開発した.その結果,これまでより少ない試料量で高出力・高精度のデータを得ることできた.また,高精度のUとThの定量分析にはTIMSを用いた同位体希釈法が不可欠であり,スパイク用濃縮233Uと229Thを購入するために科学技術庁に核燃料物質使用許可願いを申請し許可された.これらの濃縮同位体の購入は購入時期が限られていたために,来年度に変更された. (4)伊豆諸島三宅島で,火山層序に基づいて詳細な試料採集を行った.採集試料約200個について研磨薄片及び全岩粉砕試料の作成を行い,岩石学的顕微鏡記載と蛍光X分析装置による全岩主用元素及びICP-MSによる40の微量元素の定量分析を行った.その結果,古期と新期の噴火活動の間に明瞭な分化の異なるマグマが存在したことが明らかとなった.すなわち,三宅島火山ではまず液相濃集元素に乏しいマグマがマグマ溜に存在し,その後より液相濃集元素富んだマグマがマグマ溜に注入され,それぞれ独立して分化した.このようなマグマ分化プロセスは来年度からのU-Th同位体測定による年代測定とSIMS等による解析によってより具体的に理解されるものと期待される.
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