本研究は含水溶媒中でのGrignard型付加反応の開発と実践的合成プロセスへの応用と題して、環境調和適応型有機合成、すなわち水酸基やカルボキシル基の保基を必要としない、また基質や溶媒の脱水操作を必要としない、さらに有機溶媒を用いない、真に実践的合成プロセスを開発することを目的として行った。平成12年度においては次の成果が得られた。 1)アリルスズ試薬と三塩化ビスマスから得られる水中で安定なアリル化試薬を用いて、抱水アルデヒド・ケトンや無保護の水酸基・カルボキシル基を有するカルボニル化合物のアリル化反応を検討したところ、収率よく対応するアリル化生成物が得られた。また、カルボニル化合物の代わりに、イミンを用いたところ容易に反応が惹起することを見出した。さらに、これらの反応は水中でも容易に進行することが明らかになった。 2)水に溶解する光学活性プロトン酸存在下、水中や含水溶媒中で、アリルビスマス試薬やアリルスズ試薬をアルデヒドやイミンと反応させたところ、若干ではあるが、不斉アリル化反応が進行することを見出した。 3)トリブチルスズヒドリドを用いるアルデヒドの還元反応を、含水溶媒中、メタノール中、あるいは全くの水中で試みたところ、収率よく対応するアルコールが得られた。 昨今の環境問題を考えると、含水溶媒中や水中で進行する有機合成反応の開発は、今後益々重要であり、グリーン化学を目指して実践的合成プロセスを開発したいと考えている。
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