創薬を目指した軸不斉を有する生物活性天然有機化合物の合成研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11554025
• 研究機関: 大阪府立大学
• 研究代表者: 植村 元一 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (90047241)
• 研究分担者: 鴻池 敏郎 塩野義製薬株式会社, 製薬研究所, 所長
• キーワード: 軸不斉ビアリール / クロスカップリング / アレーンクロム錯体 / 面不斉 / コルペンスアミン / アルカロイド / バンコマイシン

研究概要

アトロプ異性ビアリール化合物は不斉反応での配位子どして重要な化合物であり、さらに顕著な生物活性を示す天然有機化合物にも数多く知られている。アトロプ異性ビアリール化合物を光学活性体として効率良く合成する反応の開発が重要である。本研究では、面不斉をもつ(アレーン)クロム錯体を用いて、軸不斉を有するコルペンスアミンA及びBのさらに、バンコマイシンの軸不斉ビアリール部分の立体選択的合成を行った。コルペンスアミンA及びBは抗マラリア活性を示し、ナフタレン環とテドラヒドロイソキノリン環との間で軸不斉が存在し、お互いに軸異性体である。本化合物を立体選択的に合成するにあたりアレーンクロム錯体とナフチルホウ酸とのパラジウム触媒によるクロスカップリングで、望むべき軸不斉を持つビアリール体を立体選択的に合成し、コルペンスアミンAの合成を行った。さらに、先に得られたカップリング体を熱で軸異性体へと変換しコルペンスアミンBの合成を行うことを計画した。ところが、この場合には興味深いことに軸異性化が起こらずにクロムトリカルボニル基が反対側の芳香環面に再錯体化し、結果としてコルペンスアミンBのエナンチオマーを合成した。一方、院内感染MRSAの治療薬として注目されているバンコマイシンの軸不斉ビアリール部分の立体選択的合成を同様の方法を用いて行った。光学活性アレークロム錯体とオルトメトキシフェニルホウ酸とのパラジウム触媒によるクロスカップリングでバンコマイシンの立体化学を満足するビアリール体を立体選択的に合成した。

研究成果

• [文献書誌] H.Koide,M.Uemura: "Synthesis of Axially Chiral N,N-Diethyl 2,6-Disubstituted Benzamide Utilizing Planar Chiral (Arene) chromium Complexes"Chem.Commun.. 2483-2484 (1998)
• [文献書誌] N.,Taniguchi,T.Hata,M.Uemura: "Enantiomerically Pure Cyclic Trans 1,2-Diols,Diamines and Aminoalcohols by Intramolecular Pinacol Coupling of Planar Chiral (Arene) chromium Complexes"Angew.Chem.Int.Ed.Engl.. 38. 1232-1235 (1999)
• [文献書誌] H.Koide,M.Uemura: "Axially Chiral Benzamides : Diastereoselective Nuceophilic Additions to Planar Chiral (N, N-Diethyl-2-Acyl-6Methylbenzamide) chromium Complexes"Tetrahedron Lett.. 40. 3443-3446 (1999)
• [文献書誌] K.Kamikawa,M.Uemura: "Stereoselective Synthesis of Axially Chiral Biaryls Utilizing Planar Chiral (Arene) chromium Complexes"Synlett. 938-949 (2000)
• [文献書誌] K.Kamikawa,T.Watanabe,A.Daimon,M.Uemura: "Stereoselective Synthesis of Axially Chiral Natural Products Utilizing Planar Chiral (Arene) chromium Complexes"Tetrahedron. 56. 2325-23370 (2000)
• [文献書誌] T.Watanabe,M.Shakadou,M.Uemura: "Stereoselective Synthesis of Kroupensamine A and ent-Kroupensamine B Utilizing an Identical Planar Chiral Arene Chromium Complex"Synlett. 1141-1144 (2000)