本研究の目的はこれまでの研究で有用性が確認されたマカクの細胞をヒトの加齢・老化研究のモデルとして確立し、その加齢系列細胞を保存・解析することにより、ハード(細胞)とソフト(細胞の性状)を兼ね備えた汎用化パネルを作成することである。 日本における霊長類研究の一般性と現状から、ニホンザル及びカニクイザルを対象とした。細胞の加齢現象には由来となる個体の年齢が影響するので、採材は新生児(流産・死産児を含む)から成獣までの試料を得た。ニホンザル試料は京大霊長研、カニクイザル試料は国立感染症研究所由来のもの、及び、これまでの研究で既に得ているものを用いた。 採材された線維芽細胞の初代培養から分裂停止期に至るまでの継代培養2代毎にサンプリングし、38の凍結保存細胞系列を作成した。得られた38系列の内36系列では通常の加齢パタンを呈した。残りの2系列は延命を見せた。同時に、各サンプリング時に細胞の加齢形質として、テロメア長とテロメレース発現を解析したところ、テロメアの短小化が全てに観察された。テロメレースの発現は見られなかった。マカク細胞はin vitroにいて、ヒトと齧歯類の中間型を示すことが示唆された。
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