研究課題/領域番号 |
11555005
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 康二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10107443)
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研究分担者 |
長村 俊彦 株式会社 ユニソク, 研究開発部, 部長(研究職)
目良 裕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40219960)
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 元素分析 / 蛍光X線 / 内殻励起 / 電子増倍管 / 電界放射 / 探針 / ナノ分解能 |
研究概要 |
走査トンネル顕微鏡(STM)の金属探針から電界放射電子を取り出し、これにより表面原子の内殻電子を励起し、その結果放出される蛍光X線を検出することによって、STM観察領域の軽元素分析を可能とするシステムを試作しようとしている。今年度は、蛍光X線検出の予備実験として、超急速電流遮断法により作成したW探針の高電圧、高電流に対する安定性の評価と、現有の超高真空STMにCsI電子増倍管を取り付け、グラファイト試料を用いた蛍光X線の検出テストを実施中である。電圧に関しては、炭素1s励起しきい値(283eV)を越える310Vまで、先端の損傷なしに使用できるW探針をルーティン的に作成できることを確認した。これとは別に、試料に断続光をあてたとき生じる試料の局所的熱膨張をSTM探針で検知できることを見出し、GaAs結晶を試料に近赤外光を用いて実験を行なった。その結果、表面下に存在する単独の非発光センタをナノメートルの分解能でイメージングできることが分かった。さらに、照射波長を掃引することにより励起スペクトルを測定したところ、当該センタに由来すると考えられるある波長で熱膨張が最大になることが明らかになった。このことは、光の波長域を内殻励起に必要なX線領域に広げれば、軽元素に限定されない極めて適用範囲の広い元素分析が可能であることを意味する。このため、本原理に基づき光源として放射光を用いた新しい元素分析STMシステムの検討を開始した。また本原理では一般的に、検出したい元素に固有ななんらかの光吸収を起こせばよいことから、光の波長範囲も広く設定可能である。今後赤外域も含め、利用可能な光源を用いた実験を並行して行なう予定である。
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