まず、咋年度に引き続き、銅(100)表面上のインジウム単原子層について、高分解能走査トンネル顕微鏡(STM)、角度分解光電子分光(ARPES)、低速電子回折(LEED)による研究を行った。この系では、被覆率によっていくつかの構造が形成されるが、各々が、温度変化に伴って相転移を示す。今年度の研究では、これらのうち被覆率0.63における相転移が、表面共鳴バンドが形成するフェルミ面のネスティングによる電荷密度波(CDW)転移であることを示した。 第二に、新規な低次元物性を示す表面物質の探索の過程で、銀(100)上のビスマス単原子層について、その相図の決定、低温秩序相の構造解析を行った。低温秩序相においては、ビスマス原子がジグザグ鎖を形成して平行に配列する構造であることを結論した。非常に異方性の高い構造であり、一次元的な物性を示す可能性が示唆された。 また、咋年度に引き続き、双探針走査トンネル顕微鏡についての基礎解析を進めた。独立に駆動する二つの探針の間の位置関係の制御について、新たにいくつかの方法を検討した。従来考えていた方法も含めて、分解能、安定性、操作性についての総合的評価を行った。
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