平成12年度は、2年目で最終年度に当たるため、昨年度構築した非掃引型ファブリペロー干渉系と高感度CCD検出器による高速データ取り込みブリルアン散乱装置の高精度化、安定化、ならびにその特徴を十分に活かした物性研究を行った。 昨年度の成果では、ブリルアン散乱スペクトルにおけるフィネスは70を少し変える程度であった。本年度は掃引型のタンデムマルチパス型ファブリペロー干渉計に匹敵する高分能の測定を可能にするために様々な改良を行った。具体的には、コリメーターの高精度化、収差の少ないレンズの使用、ソリッドエタロンの前ににアイリスを配置して迷光を減らす、周波数安定度のより高いリングキャビティーをもつグリーンヤグレーザー(主要備品)を励起光源として導入する等の改良を行った。またさらに高感度CCD検出器を用いて全スペクトルを一度に取り込むために干渉計の反射率を高くすることが可能となるというこの方法の長所を活かして、より高い反射率のソリッドエタロンを導入した。その結果として昨年度より格段に高いフィネスが得られるようになり、最高では昨年度の倍近くまでフィネスが向上した。また、反射率を上げたことによりコントラストも向上し、よりレーリー線の裾の切れの良いブリルアン散乱スペクトルを得ることができた。 この装置の高分解能を実証するために、低分子の中間ガラス形成液体のひとつであるエタノールの液体状態、過冷却液体状態におけるブリルアンスペクトルの温度依存性を詳しく測定し、遅いβ-過程過程の挙動を明らかにし、またその活性化エネルギーを正確に決めることができた。 また、微小試料や微小領域についてのブリルアン散乱スペクトルの測定を可能にするための顕微ブリルアン散乱の光学系の研究も行い、不均一性の大きいリラクサー強誘電体に応用してヘテロ構造を明らかにすることができた。
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