研究概要 |
近年,短パルスレーザーを用いて超音波を発生する試みが広くなされているが、強度や安定性の点から実用的応用には未だに多くの困難がある。これに対し我々は、周期的な強度変調光を出力する半導体レーザーを用いることによって、連続波コヒーレント超音波ビームを生成することに成功した。本研究の目的はこの技術を発展させ、超音波顕微鏡や医用診断装置など,特に高周波音波の利用が強く望まれている領域において有効な音波ビーム発生技術に応用することにある。本年度は、100MHzまでの広い周波数帯域でコヒーレントフォノンビームを生成し、さらにその伝搬を光散乱法によって高感度で測定するシステムを製作した。半導体レーザーからの光を試料液体に浸した金属薄膜に照射し,薄膜の周期的熱膨張を利用してフォノンを発生させる。これによりUHF帯の周波数域でフォノンビームを生成しその伝搬を測定することに成功した。 さらにレーザー光の変調により、フォノン以外の共同運動モードを励起する試みに着手した。レーザーからの出力光の偏光状態を、高速電気光学変調素子によって変調し、その光電場によって誘起される試料液体分子の配向状態を調べる。この測定を広い周波数域で行うことにより、液体分子の配向緩和スペクトルを調べることができる。この測定システムにより、液晶の等方相-ネマティック相転移にともなう配向緩和の臨界現象的なふるまいを、高い時間分解能で調べることが可能になった。
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