本研究の目的は、過去の科研費の「能動型画像処理方式による結像光学系収差除去・補正、合成結像法」に関わる研究をベースにして、収束光学系の球面収差や高次波面収差の影響を除去し、収束ビーム径制限を上回る分解能を得る新手法の確立と実証モデルの試作、検討にある。 本収差補正手法は通常結像光学系の3次元結像理論と「相反定理」から発想されたものである。平成11年度には、「相反定理」を基に、透過型走査顕微鏡における収差補正手法に関わる3次元結像理論の確立と波動伝播モデルに基づく3次元結像シミュレーションコードの作成を行っている。 平成12年度には実証モデルである「画像処理収差補正透過型走査光学顕微鏡」の設計・製作を行った。市販のレーザー走査顕微鏡の改造予定部分に予想外の問題点が見出され、透過光検出用として可動型検知器を用いる当初の計画を変更、2次元の固定光検知器を用いる事とした。この設計案に基づき、レーザー走査顕微鏡を改造し、データー収集・制御プログラムのコーディング作業を実施した。しかしながら試作機の動作確認を行う段階で、光源レーザーの経時安定性とAO偏向系の光プローブ走査に伴う波面収差の変動の問題が発生し、報告書作成時点でその解決に至っていない。 一方、透過型通常・走査両顕微鏡に対する結像シミュレーションと収差補正のシミュレーション結果の比較・検討を試みた結果、期待通り収束ビーム強度プロファイル径による制限をうわまわる分解能を有する収差補正像が確認された。本収差補正方式の透過型電子顕微鏡への応用が期待される。
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