研究概要 |
本研究の研究期間は4年間であり,本年度は第3年度にあたる.昨年度までは超離散化手法に関する基礎的な研究に重点をおいてきたが,本年度からは当初の計画通り,応用的側面に重点をおいて研究を行った.本年度行われた主要なテーマは,(1)交通流モデルのに対する超離散化手法の応用,および,(2)反応拡散系に対する超離散化手法の応用のふたつである. (1)については,まず,バーガーズ方程式の超離散化によって得られる超離散バーガーズ方程式に含まれるパラメータを確率変数とみなすことにより,線形化可能な構造を保存したまま確率的セルオートマトンを得ることに成功した.この確率パラメータは信号機とみなすこともでき,以上のことから交通流で主流となっている確率セルオートマトンモデルに対して超離散化による新しい道筋が開かれることとなった.さらに,従来の決定論的超離散バーガーズ方程式についても,多車線モデルへの拡張に成功し,自然な形で多車線の効果を取り入れていることを確認できた. 次に,反応拡散系に対する応用であるが,まず,超離散化手法でしばしば登場するmax-plus方程式によって非常にシンプルな形でのセルオートマトンのモデルを作ることに成功した.このモデルではターゲットやスパイラルなど従来の連続系で見られる現象をそのまま再現できる.さらに,モデルの数理構造を調べるうちに再帰方程式と呼ばれる非常に美しい可積分方程式が解のふるまいを決定していることに気づいた.そこで,再帰方程式の一般的構造について,解・保存量に焦点をあてて解析を行った.
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