研究概要 |
超離散化は,統計物理での低温極限に相当する過程を数学の方程式にあてはめ,デジタル化を行う手法である.この手法と微分方程式の差分化手法とを組み合わせると,微分→差分→超離散という方程式の一連の離散化が可能になる.本研究は,この離散化手法を具体的な方程式にあてはめ,どのような応用が可能かを探る研究である. 本年度の研究では,超離散化手法が基盤としているマックス-プラス代数を応用することにより,反応拡散系などのパターン形成系のメカニズムを再現できるデジタル方程式を提案することに成功した.この方程式から,ターゲットやスパイラルなどのパターンがどのような数学的表現により実現されるかが明確になり,パターン形成理論に対して新しい知見をもたらすことができた. また,キスペル系と呼ばれる非線形差分可積分系に対し,超離散化を適用した.得られた超離散キスペル系は差分のときと同様に保存量を有しており,可積分であることが判明した.さらに,解について相平面内の任意の軌道における周期がその保存量(すなわち初期値)から決定され,軌道上の任意の点から出発する解は常に同じ初期値を有していることが分かった.このような解のふるまいは従来の可積分系にない特徴であり,可積分系理論に対する新しい知見を提供している.
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