研究概要 |
昨年度までに作成した,原子間力顕微鏡下での試験が可能な平面曲げ疲労試験機を用いて試験を実施し,疲労き裂の発生と進展挙動のナノスケール動的観察に関するデータ収集を行った.まず微小切欠きを有するα黄銅の平面曲げ疲労き裂進展試験を行った.その結果,切欠き底でのすべり変形により,結晶粒界で疲労き裂が発生して粒界に沿って進展し,その後屈曲して双晶境界に沿ったき裂進展となることが判明した.また,双晶境界に沿ったき裂進展では,モードIとモードIIIの混合モード下のき裂進展となっていることが確認された.無負荷状態と荷重負荷状態におけるき裂先端近傍を連続的に観察することで,モードI成分のき裂先端開口変位(CTOD)の変化と,モードIII成分のき裂先端せん断変位(CTSD)の変化を分離してナノスケールで計測することができた.そしてき裂発生直後の疲労き裂は,分岐・屈曲を繰返しながら進展するが,そのような分岐・屈曲挙動とCTOD,CTSD変化の関連を定性的に明らかにした. また,一方向性3%ケイ素鋼板の疲労き裂進展試験を行い,疲労き裂先端近傍を原子間力顕微鏡で観察し,得られた顕微鏡画像に対して画像処理を施した.その結果ナノスケールのひずみ計測が可能となった.計測されたき裂先端近傍におけるナノスケールひずみ分布と,分岐・屈曲を伴う疲労き裂進展挙動の関連を明らかにした.
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