研究概要 |
工業品に要求される表面の幾何学的形状では平滑面が要求されることが多いが,摩擦軽減,吸着防止,ガス放出低減等で必ずしも幾何学的形状だけでは解決できない場合が多い. レーザ光を照射することで,有機材料やガラスに規則的な幾何学形状を創成できる.このような手法に加え,基板上に電子回路を付けたり,集積回路を実装したりできれば新しいセンサの作り方,あるいは新しいセンサの提案への道が開かれる.今年度の課題には,ガラス基板上への電気回路の直接描画,シリコンチップの無接着剤接合などがある. パイレックスガラス基板上に銅粉を敷き詰め,基板のもう一方の側よりアルゴンイオンレーザ光を照射して銅線の直接描画を行った.描画された線の幅および線の高さは照射エネルギー密度に大きく依存することがわかった.またガラス基板との付着力は良好で,通常のプリント基板における銅箔の付着強度と同様であった.この描画した線にダイオード,抵抗,コンデンサ等を半田付けし,電子回路を構成したところ良好に作動することが確認できた.銅のほかにもステンレス鋼,アルミニウムは比較的容易に大きな結合力が得られた.集積の程度によってはリソグラフィに代わる直接描画法として適用できる可能性があり,どこまで細い線を描けるかを明らかにする必要が課題として残った. さらに,センサ実現を視野に入れ,シリコン板とガラス板の直接接合(接着剤を使用しない)を試みた.現在,直接接合では陽極接合法が広く用いられているが,レーザを使った手法では陽極接合ほどの予熱温度を必要とせず,200℃程度で十分な接合ができることを明らかにした.この手法は,必要な部分のみを選択的に接合することが可能で,ガラスとシリコンからなるマイクロ部品の製作に有効な手法と思われる.なお,この際の接合変質層は10μm程度であったが,素子としてのシリコンへの影響を評価する必要があり,今後の課題とする.
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