研究概要 |
近年,地球環境への負荷を低減させるため,最小限の切削液しか使用しない,より現実的なミニマムクーラント切削加工技術の確立が急がれている.ミニマムクーラント切削加工技術の最大の課題は,良好な加工状態を維持しながら低減することのできる切削液の最小量を評価することであるが,現状では試行錯誤により,その量を決めている.しかし加工においても信頼性の高い事前評価が強く求められている現在,切削条件に応じて,切削液の最小使用量を合理的に評価するためのシステム開発が必須であり,これが本研究の目的である. 昨年度までは,先ずエンドミル加工における切削液への熱の流れをモデル化し,切削油剤の供給方式と供給量が切削温度に及ぼす影響を解析し,切削液供給量の低減に伴う工具面温度の変化を評価する基本的手法を確立した.また,有限要素法を用いた切削液ミストの流れ解析法を提案し,切削速度とミストの流速との関係を示した.さらに,工具に対する冷却効果をモニターするため,温度センサーを内蔵したコーテッド工具のプロトタイプを試作した. これらの結果を踏まえて本年度は,より高度な評価法を確立するため,最初に種々の条件で切削油ミストの流れ解析を行い,ミスト切削における冷却効果を詳細に検討した.また,実験で,解析の妥当性を確認した.次に,温度センサー内蔵工具の開発を進め,金-白金ならびに白金-白金ロジウムの薄膜熱電対を刃先から所定の位置に設定した工具を作成し,それを用いて切削実験を行った.薄膜熱電対の出力が小さいため,現時点での精度はそれほど高くないが,温度センサーを内蔵したコーテッド工具により工具面の温度分布を得た. 以上より,ミスト流れの評価,工具の冷却プロセスの評価,切削温度分布の直接モニタリングが可能となり,より効果的なミニマムクーラント切削加工技術を実現するための基本技術を確立することができた.
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