研究概要 |
極低温における超電導材料や超電導マグネット構造材料のトライボロジー特性を評価するため,昨年度に引き続きGM冷凍機を用いた伝導冷却型極低温硬さ計の開発を行った。昨年度の課題としては,試料の冷却が77Kまでである点と圧子温度が試料温度よりも100K程度高いことがあげられたため,本年度は試料並びに圧子冷却方法を変更を行った。また硬さ試験を行う位置を確認できるシステムの確立を行った。 まず冷却方法の改善に対しては,試料移動機構(XYステージ)を試料室外部(上部)へ移設し,試料ステージを直接冷凍機によって冷却効率の改善を計った。その結果,13-293Kまでの温度領域においてビッカース硬さ測定が可能となった。一方,ビッカース圧子の冷却についても改善を行い,現在約50Kまで冷却が可能である。しかしながら,試料温度と一致させるまでには至っていない。そこで来年度は圧子冷却方法についてさらに検討を加え試料温度と圧子温度とを一致できるように改善を加える計画である。 また圧子押込み位置確認システムの確立に対しては,ボアスコープ(オリンパス製)を試料室外部から導入することによって極低温環境におかれた試料の観察が可能となった。 極低温中で用いられる超電導材料や超電導マグネット構造材料のビッカース硬さ試験法を確立するためバルク超電導体(YBCO,(Sm,Gd)BCO)の極低温硬さ測定並びに破壊靭性値算出を行った。 その結果,圧子対角線方位を変化させると硬さの温度依存性に大きな違いが生じることが判明した。この原因については,双晶変形とき裂進展メカニズムに関連があると考察しているが,これらの検証については来年度実行する。また,硬さ,押込み時のき裂長さ及び弾性係数を用いて極低温におけるバルク超電導体の破壊靭性値(K_<IC>)を算出した。その結果,K_<IC>は温度の低下に伴って減少する傾向が認められた。本研究で求められたK_<IC>が妥当であるか,また押込み方位や位置依存性については来年度実施する計画である。 なお,本研究では摩擦特性の評価を行う予定であったが,硬さ試験機並びに試験方法の確立に重点をおいたので今年度は実施していない。そこでこれについては来年度実施する。
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