研究概要 |
極低温中で用いられる超電導材料や超電導マグネット構造材料の機械的特性をビッカース硬さ試験から評価するため,極低温硬さ計の開発並びにバルク超電導体の極低温硬さ測定を実施してきた。13年度は,バルク超電導((Nd, Eu, Gd)BaCuO)の極低温硬さ測定並びに破壊靭性値算出を行い,硬さ試験を用いた材料の強度特性評価を行った。特に今年度は超電導相の種類と含有量を変化させて極低温硬さ測定を行った。その結果,超電導相(NEG)を30mol%含有した材料(NEG30)の極低温硬さは9,800MPaを示し,それ以外の材料(NEG40, Gd30)よりも3,000-3,700MPa(at 40K)高い値を示した。一方,破壊靭性値はほとんど温度依存性を示さなかったが非常に大きなばらつきを示した。また今年度は圧子を押込む面を従来の(001)面から(100)面に変化させた極低温硬さ試験も実施した。その結果,前述した(001)面と異なりGd30が8,400MPaを示し,NEG30, NEG40より2,400-3,200MPa(at 40K)高い値を示した。さらに破壊靭性値は大きなばらつきを示し,NEG40とGd30では僅かながら負の温度依存性を示した。 これらの圧痕のSEM観察によると,ビッカース圧痕やき裂が空孔や微小欠陥に大きく影響を受けており,特に(100)面の場合は結晶成長の際に発生したマイクロクラックによってき裂が助長されたり拘束されるケースが多く,(001)面への押込みより強度特性がばらついたものと考えられる。これらの結果から,バルク材料の強度特性は材料固有の特性よりも生成過程で生じる欠陥や空孔に大きく依存すると考えられる。 極低温硬さ計の開発については,GM冷凍機の2ndステージに固定側試験片を取付け,真空容器(試料室)外部から駆動側試験片を取付けた駆動軸を往復動させることにより極低温摩擦試験が実施可能なように改良を行った。実験温度は硬さ試験と同様に,試験片温度が安定する40-293Kまでである。摩擦(接触)形態はピンオンディスクで,往復(摩擦)距離は最大10mm以内において任意可変である。負荷荷重は2kg以下が可能で,周波数は1Hzから10Hzまで実施可能である。 これらの成果から,極低温で温度精度の高い硬さ並びに強度特性を評価することが可能となり,さらに摩擦特性が求められるため超電導マグネットの発熱評価などの分野に対しても大きな貢献が期待できる。
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