研究課題/領域番号 |
11555059
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小森 悟 京都大学, 工学研究科, 教授 (60127082)
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研究分担者 |
神崎 隆男 電力中央研究所, 大気科学部, 主任研究員
黒瀬 良一 電力中央研究所, エネルギー化学部, 研究員
長田 孝二 京都大学, 工学研究科, 助手 (50274501)
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キーワード | 温度成層 / 浮力対流 / 乱流混合 / 反応促進 |
研究概要 |
本研究の目的は、不安定な密度成層状態下で発生する浮力対流が乱流混合を促進するメカニズムを解明するとともに、この浮力対流を利用して無せん断状態での乱流混合反応促進技術を開発することである。本年度は、対象とする乱流場として化学反応を伴う混合層流れに着目し、その中に浮力対流を発生させることにより、混合層流れ内での混合反応機構に及ぼす浮力効果を明らかにするための実験を行った。 上下二層の流れを作り出せる小型水槽内に上下層流れの速度が異なる混合層流れを形成させ、上層流れの温度を低く、下層流れの温度を高く設定した不安定混合層流れ、および、上下層流の温度を同じにした中立混合層流れを形成させた。また、上層の流れに弱酸の水溶液を、下層の流れに弱アルカリの水溶液を流すことにより瞬間反応を起こさせた。この浮力混合を伴う不安定混合層流れ、および密度成層のない中立混合層流れの2つの乱流場で、瞬間速度をレーザドップラ流速計、反応物の瞬間濃度をレーザ蛍光法を用いて同時測定し、反応生成量の比較を行った。その結果、混合層流れの中に不安定成層が存在する場合には、浮力により速度変動強度が大きく増加し、速度および濃度の混合層厚さも増加することがわかった。また、中立混合層流れと不安定混合層流れにおいて反応生成量を比較した場合、不安定成層混合層流れでは浮力によって反応生成量が20%程度増加することがわかった。浮力による混合反応促進機構を考察するため、レーザ蛍光法により混合界面の可視化を行った結果、中立成層混合層流れではシアーによる大規模な組織渦構造がみられるが、不安定成層混合層流れでは、浮力によって大規模組織渦が崩壊し、小スケールの乱れが増加する様子が観察された。すなわち、この大規模渦の崩壊に伴う小スケールの乱れの増加により化学反応が促進されることがわかった。 初年度および今年度の実験から、複数の乱流場で浮力対流による混合反応促進の有効性が確認されたので、今後は不安定成層乱流場での時間平均濃度と速度を数値計算できるCFDコードの開発をめざす予定である。
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