傾斜濃度勾配法による化合物半導体結晶の育成について、理論・数値解析を行った。昨年度の解析より、微小重力場においても、Bridgman法で結晶成長させた場合には、浮力対流の影響が強く、溶液中に過冷却が誘起され、結晶界面が歪められ、均一組成の結晶が育成できないことがわかった。今年度は、上記結果を踏まえ、zone法による結晶成長解析を行った。Zone法で結晶を育成した場合には、zone幅を変えることにより溶液内対流が大きく変化することがわかった。結晶径によらず、zone幅が20mmを越えると浮力対流の影響が顕著となり、高品質結晶が育成できないが、zone幅が15mmの場合には、対流および過冷却が抑えられ、ほぼ拡散律則で結晶成長することがわかった。また、溶液内温度勾配を10K/cmに設定することで、均質組成結晶の育成が可能となることがわかった。 つまり、(1)微小重力場でzone法を採用すること;(2)Zone内溶液に傾斜濃度勾配を付与すること;(3)初期zone幅を15mmにすること;(4)ヒーター速さを0.5mm/h程度とすること;(5)Zone内溶液中の温度勾配を10K/cmとすること;により、(1)拡散律則成長;(2)過冷却の低減;(3)均質組成結晶の成長が可能となることがわかった。今後は、上記結晶条件により、実際に結晶成長実験をする必要がある。少なくとも結晶径が5mm以下の場合には、地上重力下においても、均質組成結晶を育成できる可能性があるので、地上実験を行う必要がある。
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