傾斜濃度勾配法による化合物半導体結晶の育成について、理論・数値解析を行った。まず、二元系化合物半導体結晶成長モデルを開発し、結晶成長過程(溶液内速度・温度・濃度場、結晶内温度・濃度場、結晶界面形状、結晶界面成長)が数値的に解析できるようになった。上記解析モデルと計算手法を用いて、傾斜濃度勾配法による二元系化合物半導体の結晶成長過程を解析した。結晶成長方法としてBridgman法とzone法を採用した。本研究によって、以下の結果が得られた:(a)微小重力場においても、Bridgman法で結晶成長させた場合には、浮力対流の影響が強く、溶液中に過冷却が誘起され、結晶界面が歪められ、均一組成の結晶育成は非常に困難である。(b)Zone法で結晶を育成した場合には、zone幅を変えることにより溶液内対流が大きく変化する。結晶径によらず、zone幅が20mmを越えると浮力対流の影響が顕著となり、高品質結晶が育成できないが、zone幅が15mmの場合には、対流および過冷却が抑えられ、ほぼ拡散律則で結晶成長する。また、溶液内温度勾配を10K/cmに設定することで、均質組成結晶の育成が可能となる。 上記結果を踏まえ、均質組成化合物半導体の育成条件を以下にまとめる:(a)微小重力場でzone法を採用する。(b)Zone内溶液に傾斜濃度勾配を付与する。(c)初期zone幅を15mmにする。(d)ヒーター速さを0.5mm/h程度とする。(e)Zone内溶液中の温度勾配を10K/cmとする。 以上の条件により:(a)拡散律則成長;(b)過冷却の低減;(c)均質組成結晶の成長が可能となる。今後は、上記結晶条件により、実際に結晶成長実験をする必要がある。少なくとも結晶径が5mm以下の場合には、地上重力下においても、均質組成結晶を育成できる可能性があるので、地上実験を行う必要がある。
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