研究概要 |
本研究では「不釣り合い振動の適応抑制機能を有する超電導磁気浮上型弾性フライホイールの開発」を実施する.大容量フライホイールの開発は総合的な技術力を必要とする総合的な研究で上述したように広範囲な分野をカバーするが,本研究では磁気軸受安定化制御と回転軸のふれまわり振動制御・弾性フライホイールの運動安定化制御の動的安定性に限定して以下に述べる視点から焦点を絞った研究を行う. すなわち,(1)超電導磁気軸受と常電導磁気軸受の併用による高速回転時および危険速度通過時の振動制御の性能と両者の干渉による諸問題の解明,(2)弾性フライホイールを有する複雑モデルの振動のうち,回転同期の不釣り合い振動を適応抑制制御という独自の制御法によって抑制できることを検証すること,(3)超電導磁気軸受と常電導磁気軸受の併用磁気軸受の最適設計法による実現とその性能の解明.(4)弾性体としてのフライホイールの磁気軸受による振動制御性能と運動安定性の解明,(5)弾性体フライホイールの超高速回転時ヒステリシスホイップの発生の有無と動的安定性の解明を中心に研究を行う. まず,(1)に関して,超電導磁気軸受と常電導磁気軸受の併用磁気軸受自体がまだ未踏技術であって,その性能が検証された形跡が見当たらない.したがって,危険速度通過時の振動制御の性能や磁場干渉などの問題を理論と実験から明らかにする必要がある.(2)は数学モデルを必要としない全く新しい振動制御法で,この方法を適用することにより多数存在する危険速度を低振動で安全に通過することにより弾性フライホイールの超高速回転を実現する.(3)は超電導磁気軸受と常電導磁気軸受の併用磁気軸受の最適設計できわめて重要な課題である.(4)は超高速回転時のフライホイールは弾性体となるのが必然で,そのときに発生する(2)で述べた振動は異なる種々のシェル構造の共振をいかに磁気軸受で抑制するかという問題である.この問題がクリアされない限り,弾性フライホイールの超高遠回転は到底実現できない.(5)については,フライホイールの材質に依存する減衰効果がどのような作用を引き起こすかを検証するもので,そのひとつにヒステリシスホイップ現象が起こるのかどうかを見極めるということである.ヒステリシスホイップがもし発生した場合,瞬時に不安定化して破壊に至るのかまたはリミットサイクル的な挙動を呈するのか,また磁気軸受でどの程度安定化が可能かを実験的に明らかにしようとするものである. これまでの研究で10MWh級フライホイールの実現可能性について数値シミュレーションによって詳細に検討してきた.そして,標記の課題については概ね問題なく実現できるということが明らかとなった.今後は縮小モデルにて検証実験を行う予定です.
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