研究課題
基盤研究(B)
代表研究者の所属するグループは、ここ数年来STMの開発とそれを応用した研究で成果を挙げており、単に表面構造の観察だけではなく、これを駆使して試料表面のナノ領域でのさまざまな物性(電子状態・電気伝導・電気容量・仕事関数など)の測定を行い、それらのナノスケールでの振る舞いを解明してきた。本研究ではこのSTMにおける探針を超微細電子源と見なし、それからの電子照射による表面薄膜下の界面でのナノスケールでの微細加工技術の開発をおこなった。STMでは探針は表面からすれすれの位置にありしかもトンネル電流は原理的にフォーカスされることから、探針から放出される電子はナノサイズの領域に絞られている。我々は、弾道電子電界放出顕微鏡(BEEM)を用いて、金/シリコン(111)界面の電子透過確率を局所的(サイズ:〜10ナノメートル)に低くすることができ、かつそれを元に戻す技術を開発した。ビットの大きさは約10ナノメートルであり、この技術を用いることにより10ナノメートルのスケールでの書き込みおよび消去が可能であることを確認した。さらに、ビットの大きさは室温での金薄膜の粒子サイズが平均してその程度であることを反映したものであり、基本的には、書き込みおよび消去のプロセスは金薄膜の個々の粒子をその変化の単位として生じていること分かった。したがって、金粒子の径を小さくすることにより、さらにその最小サイズを小さくできることが期待される。得られた知見を通して、将来的には、ナノスケールの新しい記憶素子デバイスの開発研究のシーズを創出できると考えている。
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