研究概要 |
高誘電率膜チタン酸バリウムストロンチウム(Ba.Sr)TiO3膜を誘導結合プラズマを重畳した13.56MHzの高周波マグネトロンプラズマスパッタリングで形成した。ターゲットは(Ba+Sr)/Ti=0.986、Ba/(Ba+Sr)=0.499でほぼ化学量論的組成比であるが、スパッタされた膜はTiが過剰になる方向に組成比がずれている。誘導結合プラズマを100W印加すると、(Ba+Sr)/Ti=0.781、Ba/(Ba+Sr)=0.466で相対的にTi過剰を抑えることができ組成比は化学量論に近づく。さらに結晶性も(Ba.Sr)TiO3の(200)/(110)配向の比は0.67〜2.0まで上昇する。スパッタ中のAr圧力を0.5Paから2.0Paまで上昇させても組成比は(Ba+Sr)/Ti=0.736、Ba/(Ba+Sr)=0.459となり、化学量論に近づく。(Ba.Sr)TiO3膜結晶性は成膜温度あるいは成膜後のアニール温度を上げる程改善される。 (Ba.Sr)TiO3膜は高誘電率膜であり、バンドギャップがSiO2の8.95eVに比べて小さいことが知られている。実際に(Ba,Sr)TiO3薄膜をSi上に形成し、バンドギャップを測定したところ、4.3eVであった。SiO2と(Ba,Sr)TiO3膜の価電子帯のバンドオフセットは1.86eVであった。また、Siと(Ba,Sr)TiO3膜の価電子帯のバンドオフセットは3.55eVであり、SiとSiO2の価電子帯オフセットは4.48eVであった。 一方、キャパシタ電極のRuの仕事関数は4.93〜4.99eVであった。この結果Ru電極と(Ba.Sr)TiO3膜のバリアハイトは0.58eVと小さいことがわかった。 以上のことから、(Ba.Sr)TiO3膜を誘導結合プラズマを重畳した13.56MHzの高周波マグネトロンプラズマスパッタリングで成膜することにより、化学量論的組成比が改善され、結晶配向性が改善される。 このようにして、成膜した(Ba.Sr)TiO3膜とRu電極のエネルギーバンド構造を明らかにした。
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