研究概要 |
本研究では、高効率Cu(InGa)Se_2薄膜太陽電池を開発するためにバッファ層に着目した。従来このバッファ層には、CdSが用いられてきた。ここでは、このCdSに代わり、資源的に豊富であり、また環境負荷が少ないZn化合物であるZnOに注目した。その結果、本年度以下に示す成果が得られた。 1.昨年度開発した、原子層成長(ALD)法による高抵抗ZnOをCu(InGa)Se_2太陽電池のバッファ層に応用することにより、変換効率13.1%を達成した。 2.昨年度、Znドーピングを行うだけで埋め込み型pn接合が形成され、太陽電池の変換効率が向上することを見いだした。そこで、この技術と高抵抗ALD-ZnOバッファ層を組み合わせ、さらなる変換効率の向上を目指した。しかしながら、Zn照射と共に開放端電圧(Voc)が減少した。これは、ALD-ZnOを作製する際の基板加熱により、Znの再拡散が起こってしまうためと考えられる。 3.上記指針をもとに、Znを用いた新型バッファ層として溶液成長法によるIn(OH,S):Zn^<2+>を新たに考案した。 これは、Sパッシベーションによる表面欠陥密度の低減、Sの拡散による表面禁制帯幅の向上、Znの拡散による埋め込み型pn接合の形成を同時に狙ったものである。 4.In(OH,S):Zn^<2+>は目視で透明であり、波長400nm以下の領域でも吸収がなく、抵抗率も2.1×10^8Ωcmと高く、Cu(InGa)Se_2太陽電池のバッファ層として適用可能な特性を有していることを明らかにした。 5.In(OH,S):Zn^<2+>をバッファ層に用いることにより、初期的段階ながら、変換効率13.7%のCu(InGa)Se_2太陽電池の作製に成功した。
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