研究概要 |
本研究者らは今までに電気光学結晶の周期分極反転による疑似速度整合を利用した数テラヘルツ,サブピコ秒の高速性をもつ電気光学変調器,偏向器を達成しているが,これをCWレーザに適用した超短光パルス発生では低消光比,残留背景光が問題となっていた.本研究ではこの問題の解決するため,分極反転の断面形状を工夫して,変調器,偏向器にレンズ変調効果を加味したレンズ変調器を開発し,パルス生成,圧縮に寄与する周波数チャープ部を除く部分の光を除去した高品位,高繰り返しの超短光パルス生成器への適用を行った.この結果,以下の研究成果を得ている. 1.高品位のドメイン反転技術の確立:超高速電気光学レンズ作製に不可欠な制御性の高い高圧電界印加によるドメイン反転技術を確立した. 2.レンズ位相変調器の最適化設計と動作確認:電気光学結晶にはLiTaO3を用い,正確かつ高効率にレンズ変調効果をもたらす反転分布形状を求め,これに基づき,レンズ変調器を製作し,良質のレンズ変調器として動作することを確認した.このほか,偏向機能を併せ持つレンズ変調器も開発にも成功した.駆動周波数は10-20GHz帯で現在世界最高速である. 3.超短光パルス生成実験:2のレンズ位相変調器に回折格子対とスリットを併用し,CWアルゴンレーザより約500fsの背景光の非常に少ない繰り返し16GHzのパルス列の生成に成功,また,2のレンズ効果を持つ偏向器にスリットを用い2ps程度の帰りパルスが抑圧されたパルス列を得ることにも成功している. 4.スリットの代わりに単一モード光ファイバーを用い,光ビームの空間コヒーレンスの向上と背景光の一層の低減を図るとともに,ファイバーの群速度分散を回折格子対の持つ分散で置き換え,光の利用効率を向上させる方式を新たに考案した.2-4はいずれも世界初の試みである 5.ファブリ・ペロー変調器に適用可能な低挿入損失のレンズ変調器の開発や4の実証にいたっておらず,今後の課題としたい.
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