本研究では、ソフトウェア無線(Software Radio)において、第1に、アダプティブアレーアンテナにより、環境や応用に応じてソフトウェアを組み替えることにより万能化、適応化する理論を構築し、第2に、このようなソフトウェア制御による万能・適応アンテナを含む無線通信システム全体のソフトウェア制御による「万能と適応」という観点に基づくシステム設計の基礎理論として、空間・時間領域における通信理論、信号処理および学習理論を体系化し、第3に、その実現性を実験的に検証することを目的として問題整理、方式検討・解析を行った。具体的には、(1)ソフトウェア無線システム全体のモデル化、(2)ソフトウェアとハードウェアの互換性とバランスの検証、(3)ソフトウェア無線の対象とする通信環境および通信方式のモデル化、(4)アダプティブアレーアンテナを用いた空間・時間領域送受信機のための適応通信路符号化、復号法並びに適応アルゴリズムの考案、(5)アダプティブアレーアンテナによる空間・時間領域における適応信号処理能力を利用するための環境学習アルゴリズムの考案、(6)ソフトウェア無線機のためのCDMAセルラシステムの周波数利用効率改善方式の考案、(7)マルチメディアCDMA移動通信システムへの応用を前提としたソフトウェア無線のための広帯域アダプティブアレーアンテナとその要素技術の考案、(8)ソフトウェア無線機の適応環境能力を利用するための環境学習(変調、符号化などの通信方式及び使用帯域の自動推定)アルゴリズムの考案と性能評価、(9)ソフトウェア無線機の適応環境能力を効果的に実現するアダプティブアレーアンテナを中心とする構成法の考案、(10)マルチメディアCDMA移動通信ネットワークへの応用を前提としたアルゴリズム、構成法の理論的解析による具体的な性能評価、(11)複数の移動通信スタンダードに対応するマルチモード送受機の構成法の考案と性能評価、(12)アダプティブアレーアンテナのソフトウェア実験系の製作、(13)ソフトウェア無線機のためのアダプティブアレーアンテナの実験的性能評価などを行った。
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