研究概要 |
入力画像から有意なパターン領域をμsオーダで順次抽出するとともに,高速ウェーブレット変換による特徴抽出を行うことにより,実世界の情景画像を実時間で認識・理解する知能システムの構築に向けて,処理モデルの構築とプロトタイプチップの設計・試作を行った。モデルとして,大局的領域分割のための抵抗ヒューズ型ネットワーク,領域抽出用非線形振動子ネットワーク,および特徴抽出用ガボールウェーブレット変換のための非線形セルラーネットワーク(CNN)を採用し,以下の研究を行った。 1.ハードウェア化に適した処理モデル・アルゴリズムの開発 振動子ネットワークにおいて,不完全な分割抽出を排除する二重しきい値アルゴリズムを考案した。抵抗ヒューズと振動子ネットワークを組み合わせて,自然画像を任意の解像度で大局的に分割抽出できるモデルを考案した。ガボール変換用CNNを離散時間系のパルス変調回路で実行するために,モデルの改良を行った。これらのモデルを用いて自然画像から顔の認識が行えることを確認した。 2.振動子ネットワークチップの設計・試作 新しく提案したパルス変調方式任意非線形変換回路を用いて,振動子ネットワークのための並列処理用画素回路を設計した。この回路では,画素の輝度値を保持し,隣接画素間の結合強度を計算する部分をデジタル回路で構成し,振動子の部分をパルス変調方式によるアナログ・デジタル融合回路で構成した。0.6μmCMOS技術により9mm角チップに50x50画素相当の回路を搭載した。この回路構成では,回路規模をほとんど増やすことなく,抵抗ヒューズと振動子ネットワークを実行できる。試作・評価の結果,100μs周期の振動子動作を確認した。大局的領域分割処理とガボール変換を実行するセルラーネットワーク回路を組み合わせることで,msオーダで特徴抽出まで行えるシステムが実現できることを明らかにした。
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