研究概要 |
今年度は前年度に定式化した新しいリカレント型ニューラルネットRecurrent Log-Linearized Gaussian Mixture Network(RLLGMN)を用いて,切断者の筋電信号から前腕・手の動作を識別する方法を開発した.そして実際に,このニューラルネットを核とする筋電制御型インタフェースを構築し,その動作確認を行った.主要な結果は以下の通りである. 1.R-LLGMNを用いた新しい動作識別法の開発 混合正規分布型確率密度関数モデルと隠れマルコフモデルに基づいた新しいニューラルネットR-LLGMNを用いて,表面筋電位から前腕・手の動作をリアルタイムで識別する方法を開発した.まず,R-LLGMNに適した前処理法の検討を行い,整流平滑筋電位だけでなく,生筋電位信号に対しても十分な識別能力が実現できることを明らかにした.そして,通常の誤差逆伝搬型ニューラルネットやリカレント結合を有しないLLGMNに較べて,識別に伴う時間遅れが少なく,かつ安定した動作が実現できることを実験的に明らかにした. 2.筋電制御型インタフェースの構築 次に,R-LLGMNを利用したインタフェースシステムのプロトタイプを構築した.このインタフェースシステムは,(1)信号計測部,(2)信号処理部,(3)ニューラルネット部,(4)出力部の4つのサブシステムからなる.まず信号計測部では,使用者の筋電信号をリモート計測し,計算機に取り込む.信号処理部では計測した筋電信号をディジタルフィルタを用いて前処理し,筋電情報を抽出する.ニューラルネット部では信号処理部で抽出した筋電情報から筋の運動(動作,活動レベル)を学習的に推定する.出力部は対象とする出力機器(義手,トレーニングシステム,マウス)に応じて出力信号を生成する.以上のプロトタイプを2台の計算機を並列に結合したシステムを用いて構築した. 来年度はこのプロトタイプの識別能力,信頼性を向上させるとともに,義手制御システムを構築し,義手操作上の問題点を明確にするとともに,ニューラルネットのリアルタイム適応学習アルゴリズムについても検討する予定である.
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