研究概要 |
昨年度は地下空間の利用対象となる土木構造物を想定し,その規模・特徴・耐用年数などに合わせて,その技術的問題点・課題点を探ったが,今年度は,より現実的な問題設定に対して検討を行った. 高レベル放射性廃棄物の処分については,地下の安定な地層中に長期にわたり閉じ込めておく,いわゆる地層処分がスタンダードになるつつある.地層処分の利点としては,多重バリアである人工バリアと天然バリアの組み合わせによる核種移行の抑制ということが挙げられる.天然バリアの長所としては,岩盤自体の核種吸着能力が高い,地下水の移動が緩慢であることなどが挙げられるが,処分場施設は,多岐にわたる地下空間(アクセス坑道,主要坑道など)が建設されるため,施設の建設前後において,地盤環境が変化する可能性もある.万が一に備え,核種が最終バリアである地下水に漏洩することも想定し,こうした地下空間の掘削に伴う地盤環境の変化の程度も予測しておく必要がある.とりわけ地盤の透水性に関しては,注意を払う必要がある.施工実績の乏しい条件の下でより信頼性の高い予測を行なうためには,地下空間の掘削を精度よく再現でき,かつ,不連続面群の変形なども表現できる解析手法による解析的アプローチが必要となる.そこで本研究では,研究申請者らが開発したマイクロメカニクスに基づく連続体解析コードを改良することで研究を進めた. 本研究で得られた知見は, (1)処分坑道および処分孔の掘削に際して,初期地圧の方向や不連続面の密度などがジョイントの変形に,ひいては岩盤の透水係数に大きな影響を与える (2)処分孔を掘り下げる際にジョイントの変形領域がかなり大きくなることなどが判明した.処分坑道/処分孔周辺は,予想以上に掘削による影響を受ける為,実際の設計/施工では,こうした知見を取り込み,十分に注意を払ったものとする必要があろう.
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