研究分担者 |
田中 賢治 京都大学, 防災研究所, 助手 (30283625)
中北 英一 京都大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (70183506)
小尻 利治 京都大学, 防災研究所, 教授 (00026353)
大石 哲 山梨大学, 工学部, 助教授 (30252521)
堀 智晴 京都大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20190225)
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研究概要 |
本研究の目的は,必要なデータの取得から使用者の要求する支援情報の提供までを行う総合的洪水制御支援システムを作成し,これを実際の洪水に適用することにある.そのためにシステムの中核をなす情報工学的推論手法を用いた定性的短時間強雨予測手法(SRAI)の精度向上が不可欠となった.ここでSRAIとはレーダー,静止気象衛星画像,数値予報データを初期値として,降水物理過程を定性推論の方法で記述したシステムに雨雲の生起,発達,衰弱を予測させることで狭域(5km空間分解能)・短時間(6時間程度先まで)の降雨の予測を行う手法である. これまでの研究では,初期値として気象庁の領域数値モデル(Regional Spectral Model, RSM)の初期値(6時間毎,20km空間分解能)の格子点値(Grid Point Value, GPV)を用いて予測を行ってきたが,GPVが時空間的に粗いため,予測精度向上を図ることが困難であった.そこで,次世代数値気象モデルである気象庁数値予報課・気象研究所統一非静力モデルの予測値(1時間毎,5km空間分解能)を導入し,予測精度の向上を図った.その結果,従来では予測精度が低かった2時間〜3時間後の降雨予測をよい精度で行うことが可能になった.この予測結果を算出する際にはレーダーの実績降雨を参照して予測結果を修正しているためにNHM単体で降雨予測を行うより,よい精度の降雨予測が可能になった. 精度向上に関する研究の過程で,NHMが予報する「雲水」「雨水」の混合比をSRAIの初期値として用いるようにすれば,さらに降雨予測精度の向上が望めることが期待できた.今後はこれらの変数を取り入れて降雨予測精度をさらに向上させていく.また,適用事例をさらに増加させることにより,利用者に対する信頼度を向上させていくことも今後の課題とする. 最後にNHMを利用することにより,NHMが持つ問題点(100%の降雨予測を行うことはできない,大量のデータがあるためその解釈には高度な気象学的知識が必要など)を克服して,数値気象モデルによる予報を河川や貯水池の管理現場に適用する筋道をつけることができたことも,本研究における大きな成果であると自負している.
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