研究概要 |
土壌・地下水汚染対策を実施するとき,対策初期には汚染物質の除去率は高いものの,対策が進むと土壌・地下水中での汚染物質の存在形態が変化するため,除去率は低下していく.したがって,対策の初期から最終段階まで単一の技術を用いると,経費がかさむ割には修復効果が上がらなくなる.すなわち,効率の良い対策を実施するためには,先端的技術の開発はもちろんであるが,開発された技術がどのような汚染に効果的であるか,土壌・地下水中での汚染物質の存在形態や挙動特性を正確に把握した上で,適切な技術を選定する必要がある. このような背景に基づき,過去2年間は,既存の土壌・地下水汚染対策技術を分類,整理するとともに,実証実験を通して揮発性有機化合物によって汚染された土壌・地下水を浄化する技術として注目されているエアースパージング技術の評価を試みた.また,茶畑周辺の硝酸性窒素による地下水汚染の実態解明にも取り租み,汚染の実態と土壌・地下水中での動態に関する調査を行ってきた.研究の最終年度である今年度は,エアースパージング技術に関する実証実験で得られた技術的課題を解決するために室内実験を実施して,浄化メカニズムの解明とともに,最適な運用方法についての提案を行った.その際,エアースパージング技術による修復期間が従来型の地下水揚水技術よりもどの程度短縮可能か調べるため,数値解析によって地下水流れの変化が汚染物質の溶解除去効果に及ぼす影響を検討した.一方,硝酸性窒素に関しては,使用する肥料を減らす減肥対策が濃度低下に大きな影響を及ぼすこと,また反応性バリアを使った分解除去技術が有効であることを確認した.これにより,減肥によって新たな汚染を防ぐとともに,すでに地下水まで達している汚染に対しては反応性バリアを使って分解除去する方法が最も効果的であることが明らかになった.
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