研究課題
基盤研究(B)
本研究は、運輸分野に着目し、さまざまな温暖化ガス抑制策の包括的な評価モデルを開発すること目的としている。今年度の成果は以下のとおりである。1.自動車交通に起因する温暖化ガスの削減政策の効果と影響を時系列として計算することができるという実用性を有する動学的応用一般均衡を開発した。ここでは、家計は将来を見越して貯蓄と消費と選択する。消費には車の所有という変数を明示的に組み込み、政策の自動車保有と利用への影響を分析できるようになっている。企業も同様であるが、投資という行為を明示的に表現した動的モデルとなっている。市場は毎年均衡し、均衡効用水準の変化で厚生水準を表現する。2.上記のモデルを用いてシミュレーションを実施し、以下のような結果を得た。現在政府が目標としている2010年における運輸部門の排出抑制目標1990年比17%増を達成するための炭素税税率としては8.5万円/tCO2に設定すればよいことが判明した。現行の税率は炭素税に換算すると6.2万円/tCO2であるから増税額は2.3万円/tC02である。また、年あたりの増税による厚生水準の損失は約5千億円/年である。さらに2010年度1990年比6%削減目標に対しては、11.3万円/tCO2の炭素税率を必要とし、年あたりの増税による厚生水準の損失は約1.7兆円/年である。なお、上記の値は燃料価格の弾力性(0.3を採用している)に決定的に依存する。3.都市における土地利用規制策は交通需要を変化させることに注目し、温暖化ガス抑制策としての土地利用規制策の効果を分析するモデルとして静的応用都市経済モデルを開発した。そして、岐阜都市県域におけるシミュレーションを実施し、以下のような結果を得た。温暖化ガス削減便益が5.2億円/年(2.6千円/tCO2)であり、規制に伴う厚生水準の損失が8.2億円/年であり、土地利用規制策は効率的な温暖化ガス抑制策とは言えないことが判明した。ハイブリッド型SNA産業連関表を用いて温暖化ガスの発生要因の歴史的変遷を示した。
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