研究概要 |
昨年度に引き続き,復元力特性の定式化と数学モデル作成の際の基本資料のベンチマーク・テストとして実大木造骨組の水平加力実験を行った。 共通事項として各試験体は,スパン1間1960mm,高さ2760mm,柱と土台は105角ヒノキ,梁は105×240断面ベイマツをを用い,柱と梁及び柱と土台をT型金物で固定した。 筋かい形式試験体は二つ割り筋かいをZ金物で固定し,筋かい1本の試験体,筋かい2本が対角に配された試験体,逆V字型に筋かいを用いた試験体である。実験では圧縮側筋かいの構面外座屈により耐力劣化が生じ,破断に至る挙動を得た。耐力劣化時の層間変形角は,概ね1/60[rad]であり,現行設計規準で考慮されている1/120[rad]よりも大きな変形角であることを確認した。 土塗壁形式試験体は荒壁塗り,貫伏せ,底埋め,中塗りの各工程をすべて行った試験体と土壁がなく軸組のみの試験体である。土壁有りの試験体では,層間変形角1/60[rad]程より土壁が剥離し始め,耐力劣化が生じた。土壁が6分の1以上落ちると,土壁無しの試験体とほぼ同じ挙動を呈した。 接合部がデザインされた軸組試験体は,柱の片側に斜方杖を樫材の栓で固定した試験体とボルトで固定した試験体,また柱の片側にL型方杖を樫材の栓で固定した試験体とボルトで固定した試験体である。実験より方杖で補強された柱の負担せん弾力は何も補強されていない柱の負担せん弾力の約2倍以上であることが確認できた。 本研究より得られた実大木造骨組の実験結果とこれまでの収集資料を用いて木造軸組構造物の復元力特性の骨格曲線の定式化を試みた。さらに,その復元力特性を用いて,一般的な壁量を有する木造建物を例として地震応答解析を行い,その有用性を提示した。これは今まで耐力壁として考慮されて無かった軸組や接合部の影響も考慮して構造設計を行う一例を提示したことにもなる。
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