研究概要 |
正20面体クラスターを構造単位とするボロン系半導体は、フォノン介助ホッピング伝導により温度の増加とともに電気伝導率σとゼーベック係数Sがともに増加するものがある。さらに正20面体クラスターは結晶の並進対称性とは相容れない5回対称性を持つために、その結晶構造は隙間の多い大きく複雑な単位胞を持つものが多く、熱伝導率κも小さい。これらのことから高温熱電材料として有望であると考えられている。β菱面体晶ボロンにVやCoをドープした試料を、アーク溶解法と、さらに粉砕しホットプレスすることにより作製し、熱電特性を調べた。他元素のドープによりσは増加するがゼーベック係数Sは減少した。σやSではアーク溶解法で作製した試料とホットプレス法で作製した試料の差はあまり大きくなかった。κにおいてはホットプレス法によって作製した場合減少する傾向が見えた。この理由は、結晶粒微細化やポーラス組織により、電子よりフォノンが効果的に散乱されたためと考えられる。結果的に、1.5at.%Vドープにより、p型でボロン系半導体において最高性能指数を持つB_4Cと同程度のn型材料が得られた。 同じく正20面体クラスターを構造単位に持つアルミ系正20面体相準結晶は、金属と半導体の中間的な電気物性を示すことが知られており、比較的高いσ(金属的)と大きなS(半導体的)を併せ持ち、アモルファス固体並に小さいκを持つ高性能の熱電材料が期待される。昨年までの研究で遷移金属濃度の増大により共有結合性が増大し、組成に敏感に性能指数が増大することを明らかにしたAlPdRe準結晶において、ReをRuに置換し、Al-遷移金属間の結合性を変化させた時の熱電特性への影響を調べた。Ruの置換量が中程度(X=0.4, 0.55)では、σが上昇し、Sのピークが高温側にシフトする傾向が見られた。κには大きな変化はなかった。そのため、無次元性能指数ZTとしては約1.5倍に向上した。
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