研究概要 |
本年度は有限温度の効果を取り入れる計算手法の確立とコードの開発,ならびに計算経験の蓄積をおこなった.本研究の最終目的が状態図作成のための汎用コードの開発であるため,おもに計算手法の確立に重きを置いて開発を進めている. 現在までに終了したコードの開発は, 1.ボンドオーダーポテンシャルの並列高速化 2.モンテカルロ法による固体の自由エネルギーの高精度計算 である.モンテカルロ法による固体の自由エネルギーの高精度計算ではEinstein結晶からの摂動により高精度に自由エネルギーを計算する手法のコーディングと計算手順の確立が終了した.現在,多元系の状態図作成に不可欠なグランドカノニカル集団でのモンテカルロ法のコーディングを急いでいる. 一方,もう一つの柱となるタイトバインディング・パラメータの抽出では二種類の第一原理フルポテンシャルLMTO法を導入して評価を行った.マフィンティン球間領域を平面波で補完するSavrasovの方法が計算時間は数倍かかるものの,より優れた数値の収束性が得られることが判った.ただ,このポテンシャル計算からタイトバインディング・パラメータを抽出するには,ad hocなフィッティングに頼っており,この操作を自動化する手法の理論的な導出が目下の急務である.
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