本研究は、非鉛系の強誘電体単結晶にエンジニアード・ドメイン構造を導入することにより、非鉛系圧電材料ではこれまで報告されていない巨大な圧電特性を目指すことを目的として行われた。その結果、一般的な非鉛系強誘電体の代表であるチタン酸バリウム単結晶を用いて、エンジニアード・ドメイン構造を導入し、圧電特性との相関を検討した結果、以下のことを明らかにすることができた。 (1)エンジニアード・ドメイン構造という概念が普遍的であり、すべての強誘電体結晶に適用できる。 (2)正方晶、斜方晶、菱面体晶という各構造ごとに導入されるエンジニアード・ドメイン構造は異なること (3)斜方晶構造で、立方晶表記で[001]方位を利用して導入したエンジニアード・ドメイン構造を持つチタン酸バリウム単結晶において、PZTセラミックスを凌駕する圧電特性を得られたこと (4)エンジニアード・ドメイン構造において、構成するドメインサイズを細かくし、単位面積当たりのドメイン壁密度を増大すればするほど、圧電特性が飛躍的に向上すること 以上の結果をもとに、室温で斜方晶構造を持ち、相転移温度が200℃以上で広い温度安定性を持つニオブ酸カリウム単結晶を用いて、上記エンジニアード・ドメイン構造を導入する研究を行っている。この研究は現在進行中であり、非常に大きな圧電特性の発現を期待できそうな状況にある。
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