研究概要 |
薄膜にかかる応力をモデル化するために、PbTiO_3基とした薄膜の作製を行った。具体的にはAlとNbを添加したPb(Al,Ti)O_3とPb(Nb,Ti)O_3と、Zrを添加したPb(Zr,Ti)O_3薄膜を作製した。(100)MgO基板上に作製したPb(Nb,Ti)O_3薄膜は、Nbの添加量に伴って、c軸の格子定数が低下し、a軸の格子定数が増加して正方晶性が低下した。この時、薄膜は(001)配向性が向上することが観察された。従来のPbTiO_3基薄膜の配向については、すでに申請者が、c軸とa軸の格子定数の比が小さくなると、(001)配向しやすいという法則を見いだし、この理由として、薄膜にかかる応力が大きく影響していることを指摘しいる。今回のPb(Nb,Ti)O_3薄膜の結果はこれと一致している。 一方、Pb(Zr,Ti)O_3薄膜については、(100)SrRuO_3//(100)SrTiO_3、(110)SrRuO_3//(110)SrTiO_3、(111)SrRuO_3//(111)SrTiO_3薄膜上への成膜を行った。正方晶系および菱面体晶系の薄膜について強誘電特性を測定した結果、分極軸方向が最も大きな強誘電性が確認されたものの、他の方位の薄膜についても単結晶で予想されているより大きな強誘電性の存在が確認された。この原因としては、応力によって誘起されたドメン構造を考慮することで基本的には説明できることがわかった。しかし正方晶では結果は良く説明できたものの、菱面体晶ではこれだけでは完全には説明できず、結晶内に残留する歪が重要な役割を果たすことが明らかになった. またエピタキシャルと多結晶薄膜について、強誘電性の膜厚依存性を調べた。どちらでも膜厚の減少に伴う強誘電性の劣化が認められた。
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