本研究では電界制御型強誘電体あるいは量子常誘電体を設計するための指針を得るべく各種誘電体材料を新規に合成しそれらの評価を行った。 (1)ドメイン壁状態を有する強誘電体の電場およびバイアス依存症 ドメイン壁状態すなわち双極子モーメント間の相関長が短く、3次元的な強誘電体となることのできない誘電体はナノオーダのドメインを形成しているが、各ドメイン間の領域はドメイン壁と呼ばれ外部からの電場によりモーメントが整列し既存の強誘電体ナノドメインの大きさを大きく変化させることができる。本研究ではこのような短い相関長を持ちしかもドメイン壁状態をとると考えられるSrTi(^<16>O_<1-x>^<18>O_x)_3を合成した。本系は^<18>O置換により量子常誘電体から強誘電体へと変化することが知られているが、まず最初に^<18>O置換にともなうT_cの変化を調べた。^<16>Oの^<18>Oによる置換にともなう誘電性の変化は以下のようにまとめられる。(1)0【less than or equal】x【less than or equal】0.33量子常誘電体領域:この領域ではxとともに誘電率は上昇するがT_cは現れない。しかし臨界指数γは上昇する。(2)x=0.33量子強誘電性の発現:この領域でT_c=0Kとなる。(3)x【greater than or equal】0.33T_cの出現と高温度への移動:この領域でγは減少し、T_cは上昇する。最終的にγ=1.33T_c=24Kとなる。次に本系に対する誘導率のバイアス依存症と電圧依存症を調べた。バイアスをかけたところ誘電率は急速に減少し、1kV/cmではゼロバイアス時に比べて約10%の値となった。また誘電率の測定電圧依存症を調べたところ、50V/cmから1kV/cmまで放物線的に上昇し、最終的には50%増加した。これらの結果はドメイン壁状態を支持するものであり、これらの結果を解析することにより"制御可能"な強誘電体の作製が可能になるものと考えられる。
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