研究概要 |
照射光を遮断しても発光が長時間継続する長残光性蛍光材料は,オプトエレクトロニクスなどさまざまな分野への応用が期待できる。ガラスに熱処理を施し微結晶を析出させることができれば透明結晶化長残光性蛍光ガラスセラミックスが作製できる。本年度はEuイオン添加アルカリ土類アルミン酸塩およびアルカリ土類珪酸塩についてガラスセラミックス化を試みた。本年は特にEuイオンの状態を残光特性に直接関係している+2価とし,その存在割合を多くするために溶融と結晶化熱処理を還元雰囲気で行うなど工夫を凝らした。長残光性蛍光の波長,強度および残光継続時間を評価した。最適組成・最適熱処理条件の探索など長残光性蛍光材料の設計指針を確立することを目指した。 まず,CaO-Al_2O_3-SiO_2系ガラスから長残光蛍光性が優れているEu^<2+>,Nd^<3+>イオン含有CaAl_2O_4結晶が析出した透明ガラスセラミックスを作製することを試みた。組成に検討を加えた結果,46.5CaO・46.5Al_2O_3・7SiO_2(0.5Eu_2O_3・1Nd_2O_3)mol%のガラスがCaAl_2O_4結晶の析出に最適であることが判明した。このバッチに20wt%の砂糖を加え1650℃,15分間溶融後,900-980℃の範囲で大気雰囲気および炭素還元雰囲気で結晶化処理することによりほぼCaAl_2O_4結晶のみが析出したガラスセラミックスが作製できた。還元処理で得られた試料ではEu^<2+>の存在割合が多いため長残光蛍光特性は良好であり,前年度の水素還元で得られたものより格段に優れていた。950℃で炭素還元熱処理した場合,熱処理時間とともに残光特性は向上するが8h以上では残光特性はかえって低下した。これは長時間の熱処理により構造緩和が促進され,その結果励起電子がトラップしやすい欠陥が減少したためと考えられ,透明性と残光特性が両立する最適条件の範囲を見つけることができた。一方,Eu^<2+>とDy^<3+>イオン含有SrO-MgO-SiO_2-B_2O_3系ガラスを還元溶融後,炭素還元雰囲気で結晶化することによりSr-Akermanite結晶が析出したガラスセラミックスが作製できた。CaO-Al_2O_3-SiO_2系より長波長の光で励起が可能であり,またアルカリ土類イオン種を変えることによって発光波長の調整が可能であった。
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