研究概要 |
従来のPTCRセラミックスとは全く動作原理の異なる「金属-絶縁体転移型PTCR材料:Bi-絶縁体コンポジット」の「温度感応型電流制限素子」への応用に向けて実験的検討を重ねた.この材料は,絶縁体マトリックス中に分散したBi微粒子が構成する金属ネットワークの温度変化に伴う可逆的自己修復過程を利用するものである.PTCR特性メカニズムの解明と素子化の検討のため,2種類の新規電流制御素子のプロトタイプを作成した.また,既存のPTCR材料のマイクロ波過熱による性能改善の検討も並行して進めた.主な結果を以下に要約する. (1)Bi・ポリイミドコンポジットは昇降温過程で室温抵抗率が増加する等の問題点があった為,ガラス微粉末を絶縁体に用いたところ,繰返し昇降温に対して1Ωcm程度の低い室温抵抗率を保持し,Biの融点以上の高温で10^6Ωcmを上回る抵抗率を示した. (2)Biの導電パスがサブミクロンオーダであるとする状況証拠に基き,PTCR特性のメカニズムとして「Biによる導電性ネットワークモデル」を提案した.また,抵抗率-温度特性に見られるヒステリシスがBi微粒子の凝固過程によるものとして説明できる. (3)Bi-Sn合金・ガラスコンポジットでは抵抗転移温度がBaTiO_3並に低下したが,その抵抗率-温度特性は半導体的であり,抵抗変化は小さい. (4)チューブラ型及びスパッタパタン型のPTCR素子プロトタイプを作成した.両素子ともに,ミクロンサイズあるいはそれ以下のBiをガラスマトリックス中に封入することが,PTCR特性の発現において重要な因子である. (5)マイクロ波加熱プロセスによってBaTiO_3系PTCR材料の作成を試みた結果,同材料の室温抵抗の低下を実現し,性能改善の可能性を示した.しかしながら,そのPTCR特性はBi・ガラスコンポジットのそれを下回る.
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